黒猫物語新緑学校の二人エピローグ

この小説は純粋な創作です。実在の人物団体に関係はありません。

このまま

お屋敷に向かいます。

伊東は

そう

囁いてドアを閉じた。

車が発進する。

街を抜ける間が

ひどく

長く感じる。

俺は

インカムに囁く。

屋敷の回りを確認しろ。

もう

手配してあります。

ほう

息をつく。

伊東が

それをしていないはずはない。

帰路の全てに

鷲羽の守りは固められている。

俺は

どうかしてる。

気づくと

俺の手にそっと瑞月の手が

乗っていた。

海斗?

その声に

初めて

俺はお前を見詰めた。

どうしたの?

あどけない声ごと

お前を

抱き締めた。

海斗やっと抱いてくれた。

お前は深く息を吸う。

さっきね、

嬉しかったよ。

鼻を俺の胸に擦り付けて

お前は囁く。

そうか。

そうだよ。

海斗が

来てくれたんだもん。

その指が

俺の胸を辿る。

あのね、

トムさんが助けてくれたよ。

甘い声が

宥めるように

教えてくれる。

そうだな。

俺は応える。

みんなね、

優しかったよ。

声は

優しく続く。

そうだな。

俺は応える。

みんな

来てくれたよ。

嬉しそうな声に

微かに胸は痛む。

そうだな。

痛みながら、

俺は応える。

ぼく、

一人じゃないね。

そうだ。

一人じゃない。

手を離れていく小鳥の翼が

空を行くのが見える。

そうだな。

俺の声は沈む。

でもね、

海斗が来てくれたのが

一番嬉しかったよ。

可愛い声が

無邪気に言う。

そうか。

俺は弾みそうになる声を抑える。

海斗、

ぼくを見てたでしょ?

声が

甘く蕩ける。

ああ

見ていた。

見ていたとも。

海斗のこと

感じたよ。

感じたから

呼んだよ。

よさこいよさこいって

いたずらな指が

俺のスーツにかかる。

お前は

もう

後部座席で何ができるか

よく知っている。

そのブラウスの清楚な襟は

ふわりと細い首を包み、

俺を誘っている。

薄絹をはがれ

シートに沈みながらお前は囁く。

内緒だよ。

ぼく、

海斗が来てくれたのが

一番嬉しかった。

イメージ画はwithニャンコさんに

描いていただきました。

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